どうもはらぺこグリズリーです。
いつもこのブログをご覧になってる皆様、本日も来てくださって誠にありがとうございます。
今回は先日出版させて頂いた著書「世界一美味しい煮卵の作り方」についてお話させて頂こうと思います。
読者の方は既にご存知かもしれませんが、すごくありがたいことに控えめに言って、多くの方にご愛読頂いているようです。
発行部数は現在27万部とのことで本当に驚いております。。
先日は、レシピ本大賞という料理本の中で最も権威のある賞を受賞させて頂きました。
このたびレシピ本大賞を受賞させて頂きました。
— はらぺこグリズリー@レシピ本大賞受賞 (@cheap_yummy) 2017年9月12日
自分のような未熟な人間がこのような栄えある賞を受賞させて頂けて、本当に光栄に思います。
読者の皆さまのおかげです。
本当に本当にありがとうございました。 pic.twitter.com/ufVD0wVnOX
何から何までびっくりです。。
多少のプレッシャーを感じつつも筆者程度の人間がここまで注目してもらえることは本当にありがたいことだと感じています。
また、最近では「筆者の話を聞きたい人が本当にいるのか!?」と戸惑いながらもメディア出演の機会まで頂きました。
その際新聞、ラジオ、テレビなどの媒体こそ違えど毎回のように質問してくださることがあります。
「どのようにしてベストセラーの本を作ったのですか?」
というニュアンスの質問についてです。
「ベストセラーは言い過ぎなんじゃないかなあ…」
と毎回心の中で小さくツッコミは入れつつも、本当にこのことをよく聞かれました。
実はもしかしてこの「問い」に対する筆者なりの考えに需要があるのでは?と思い、このたび筆を取らせて頂きました。
ただ、この本自体「ベストセラーを作るぞ!」と意気込んで作った訳ではないので、あくまで
「どんな思いで筆者はらぺこグリズリーがこの本を作ったのか?」
「どうやってこの本を作ったのか?」
についてのお話をさせて頂ければと思います。
※今回の記事は「ベストセラーの作り方」ではありません。
※そんなものがあったら筆者が知りたいぐらいです!!!!!
本はお金を出さないと手に入らないもの
「絶対に買った人に損だけはさせたくない!」
これは書籍化が決まった時に筆者が真っ先に思ったことです。
なぜなら、本というのはお金をださないと買えないものだからです。
「おい!何を当たり前のことを言ってるんだ?」と思うかもしれませんが、
「人様にお金を出して買って頂く」ということは非常にありがたいことで尊いことです。
お金は勝手に出てくるものではありません。
汗水たらして働かないともらえないものです。
そのお金をわざわざ筆者の本を手に入れることに使って頂くという行為は本当に本当にありがたいことです。
だからこそ、そんな貴重なお金を使ってまで「はらぺこグリズリーの本を欲しい!」と思ってくれた方に
絶対に損だけはさせたくありません
もし筆者の本を買ってくださったお客様が「せっかくお金だして買ったのに、大したことなかった。」
なんてことになったらと思うと、本当に想像するだけでとても申し訳ない気持ちになります。。
なので、書籍化が決まった当初からどんな時もずっとこの気持ちは持ち続けていました。
作るからには人様の役に立つ本にしたい
こうして、筆者の中の根幹の部分として「絶対に損だけはさせたくない」という思いがありました。
では、どうしたら買ってくださった方に損をさせないような本になるのでしょうか。
ブロガーの書籍化と聞くと知名度や人気のあるブロガーの書籍化というのがほとんどです。
ちきりんさんやイケダハヤトさんのように人気や知名度のあるブロガーであれば
「ちきりんさんの本が出たなんて嬉しい!買おう!」
「イケハヤさんの本が出た参考にしよう!」
となり、「その著者の本を買うという行為そのもの」が既に満足に繋がります。
1番すごいのはこういった知名度もあって人気者な方々だと思います。
しかし、筆者の場合は
「は、はらぺこグリズリー!?誰だよ!!!!!」
となってしまいます。
むしろその程度の筆者が本を出版させて頂く機会がもらえただけでも光栄です。
・無名の筆者の本を人様にお金を出して買って頂く
・さらに、買った人に絶対に損はさせたくない
この条件を満たす方法について真剣に考えた結果、
「徹底的に人様の役に立つ本を全力で作る」という結論になりました。
とにかく「はらぺこグリズリーってやつの名前は知らないけど、この本けっこういいじゃん!」
そう思ってもらえるような本を作ること、それが本を作る上でのゴールでした。
そんな本を作るためなら
全レシピ作り直しもするしいくらでも時間を惜しまない!
良い本を作るために、絶対に妥協はしないと心に誓いました。
結果的には書籍化のお話が来たのは筆者が23歳の時、出版できたのはなんと2年後の25歳の時でした。
筆者の20代前半の半分は本を作るために時間を使ったと言っても過言ではありません。
どんな本を作りたいのか、なぜ作りたいのかをメンバーと共有する
次に筆者は上記で述べたような
・「何を作りたいのか」
・「なぜ作りたいのか」
という2つの軸を本を作るメンバー全員と共有することにしました。
なぜこの2つの軸にしたのかというと、モノづくりをする時には「何を作りたいのか」= whatの共有だけでは足りないと考えたからです。
※「何を作りたいのか」については、下記にさらに具体的に書いてあるので良かったら見てみてください
www.cheap-delicious.com
筆者はモノづくりをする上で、「なぜ作りたいのか」という思いの部分まで、共有することも非常に重要だと思っています。
なぜなら何かをチームで作る時に「何を作るのか」というWhatの部分だけではなく、
「なぜそれをするのか」という気持ちの部分までメンバー全員と共有しておくことで、細部までブレないモノづくりができるからです。
「何を作るのか」というWhatの部分だけを共有したままモノづくりを始めてしまうと、
個々のメンバーが「何を作るのか」に当たる対象物を作ることが目的となってしまいます。
すると、どういう意図でそれを作るのかが分からないまま作業することになります。
そうなると、各々の作業の意図はバラバラなのにみんなで一つのものを作るという現象が起こります。
一応「何を作るのか」ということ自体は共有できているのでモノ自体は滞りなく作れるかもしれません。
しかし、肝心の出来上がるモノは良い作品になる可能性は低いです。
なぜなら作業が細部まで行き届きにくいからです。
本当に細かい細部の部分まで完全に完璧に作り上げるには、「何を作るのか」というWhatの部分だけでは難しいです。
「どんな思いによってこの本を作るのか」という気持ちの部分まで一致していないと良い作品はできません。(あくまでも筆者の経験上の話ですが)
なので、筆者は「何を作るのか」、「なぜ作りたいのか」の2つの軸を共有するために企画書を作りました。
「本作り素人の筆者の言葉が伝わるかどうか?」という不安な気持ちもありましたが、初めての顔合わせの時に熱くプレゼンさせて頂きました。
この時、本当に良かったと思ったのが、編集さんやスタイリストさん方いわば「プロ」の方々がただの一般人である筆者の言葉にちゃんと耳を傾けてくださったことでした。
「とても良い本になりそうです!はらぺこさんの思いが伝わりました。頑張りましょう!」と言ってもらえた時は本当に嬉しかったです。
スタイリストさん「早速LINEグループ作りましょうよ!?ワクワクしてきましたね!!」
編集さん「はらぺこさん、せっかくだからグループ名付けてください!」
その時連絡用のLINEグループも作り、いよいよ始まるんだなと感じました。
ちなみに筆者は気の利いたグループ名が思いつかず「レシピ書籍」というなんとも地味な名前にしてしまいました。
こうして素晴らしいメンバーに恵まれたおかげで、本づくりに向けて作業ができる万全の環境ができました。
「何を作るのか」というWhatの部分と「なぜそれをするのか」という気持ちの部分が完全に同じベクトルに向いた状態になったのです。
ほぼ全員がレシピ本に関しては素人メンバー
皆様は驚くかもしれませんが、今回の書籍化で関わったメンバーはほぼ全員料理本をつくるのが初めてでした。
フードスタイリストさんを除く光文社の編集の方、編プロの方、そして筆者の全員が料理本をつくった経験が1度もなかったのです。
料理本に関してはいわば完全に素人集団でした。
新書という珍しい形式での料理本での試みということもあり、参考にできる料理本も非常に少ない状況。
ですがそれ故にこれが正解という概念に囚われず、思いついたアイデアを加えられるなどかなり自由にやらせて頂けるチームでした。
はらぺこグリズリー「読み物として面白くしたいから漫画をつけたい!」
編集さん「いいよ!」
はらぺこグリズリー「レシピの再現性が高い本にしたいから全部の工程に写真をつけたい!」
編集さん「OK!」
といった感じで、自分のような書籍の実績が全くの0の人間の意見を全て採用してもらえました。
普通ではありえないことです。
もちろん「なぜそれをするべきなのか?」という合理的説明はメールやLINE、通話とったやりとりを重ねて丁寧にさせて頂きました。
しかし、普通は実績がなければ多くの場面で自分の意見を言っても通らないことのほうが多いです。
そんな中、自分の場合はかなりやりたいようにやらせてもらえました。
最初に「この部署に料理本を作った経験がある人はいません。」と言われた時はどうなることかと思いましたが、
結果的には本当に幸運でした。
おかげで自分の中で「こうすれば良いモノが作れる可能性が上がる!」と思っていたこと全てをこの本に詰め込むことができました。
売れている本を買い漁って分析しまくった
これは売れている本を作るためにやったというよりは、
「売れている本 = 多くの人に手にとってもらえる本になっている = 良い本である可能性が高い」
と考えたからです。
そこで、売れている本はどのように「読者の体験」をデザインしているのかを徹底的に分析することにしました。
小説やエッセイは文字情報だけなので文章のみでの勝負です。
ですがレシピ本となると読みやすさや使いやすさも含めた総合力が決め手になると考えました。
普通の本と異なり、読みながら実際に作業をすることも想定されます。
作業しながら読んでいるのに
・すんなりと該当箇所を見つけられない
・目線を何度も移動させなければならない
読む時に
・実際は簡単なのに「私にはこの料理は難しすぎる」と思わせてしまう
・文章ばかりで「作るのがめんどくさい」と思わせてしまう
といったことがあれば、レシピがどんなに優れていてもレシピ本としては良い本とは言えないでしょう。
ゆえに料理本において、読者がどんな体験をするデザインになっているかは、レシピの質の高さと同じぐらい非常に重要であると考えました。
そして、色んなレシピ本を買い漁って徹底的に分析した結果、自分の中で料理本における
「読者がどんな経験をするデザインが良いのか」みたいなものが見えてきました。
そこからさらに、読者に2,3歩上のもっと素晴らしい体験をしてもらえるようにするために、
さらに研究に研究を重ねていきました。
このプロセスは色々な発見があり、とても楽しかったのを覚えています。
最後まで、細部までこだわった
「例え1%でも人様の役に立つ本としての完成度を上げられるならば!」という考えで文字通りギリギリまで何度も修正・変更・追加をしました。
具体的には
・「そぎ切り」という名称を使うか「右斜上から包丁を入れる」と表現するか、または両方書くか?
・「材料を切って鍋に入れる」か「材料を切る。切った材料を鍋に入れる」という表現のどちらが分かりやすいと感じるか?
・「真っ白の空白ページは味気ないし、せっかくだからグリズリーのコラムを入よう!」ということが印刷所に行く18時間前に急遽決定する
といった大きな変更から、「どっちでもいいじゃん?」というような部分まで本当に細部までこだわりました。
自分からの直しの申し出もありましたし、編集さんからのご指摘での直しもありました。
直しという作業は当たり前ですが負担もあります。
お互いに
「これを指摘すると、最終的に自分も大変な作業をすることになる。いわば特大ブーメランになる。」
ということを分かっていました。
色稿の段階で修正が3回も入ったと言えば、書籍関係者の方ならそれがどれほど壮絶だったかが伝わるかと思います。
それでも「1%でも人の役に立つ本にするための可能性を上げたい!」という思いで壮絶な修正や変更作業という名のブーメランの投げ合いをしました。
ここまで最後の最後まで細部まで作り込むことができたのは、最初に「何をつくるのか」「なぜ作るのか」という根幹の部分まで思いを共有できたからだと思います。
本当に最高の素晴らしいメンバーに恵まれました。
最初から最後まで運に恵まれた
ここまで「どのようにしてこのレシピを作ったのか」や「その時々の思い」を語らせて頂きました。
しかし、これらのことをしたおかげで27万部というベストセラーやレシピ本大賞の受賞に結びついたのではないと思っています。
謙遜してると思われるかもしれませんが、作った自分が1番良くわかっています。
結果に関しては一言で言って、運が良かったと言い表すことが一番適切だと思うのです。
・様々な提案を受け入れてくださった光文社さん。
・多くの書籍の出版に携わってきた編集の方。
・素晴らしい盛り付けと食器の選定までして頂いたフードスタイリストさん。
・撮影当日慌ただしい中素晴らしい写真を撮ってくださったカメラマンさんたち。
・書籍をより魅力的にしたクマの漫画を描いてくださったデザイナーさん。
・撮影当日、一生懸命にお皿やフライパンを洗ってくださったスタッフさんたち。
これらの多くの方々に恵まれなければこの結果は生まれなかったと思います。
そしてこの方々が素人である筆者のやりたいこと、やりたい理由に耳を傾け、協力し、助けてくださいました。
さらに言えば、自分の本が出せるということになれば筆者に限らず誰だって頑張ります。
料理本に限らず本の著者さん方はどなたも魂をこめて本気で作っていることと思います。
そんな魂がこめられた本が書店には数えきれないほど並んでいます。
それぞれが作者の方の情熱や想いが込められて一生懸命作られた本です。
そんな中から、自分の著書がたまたま売れるという確率の低さを考えると、これもやはり運が良かったとしか思えません。
本当に最初から最後までただ運が良かっただけなんです。
そして、この運を掴みとれたのも、そもそもは書籍化というチャンスを頂く機会をくださった読者の皆様のおかげです。
本当に本当にありがとうございました。
あくまで運が良かっただけですが、この結果に恥じないようなレシピ作りを今後ともやっていきたいと思います。